こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。



愛犬が首を振ったり、後ろ足で耳を掻いたりする仕草が増えてきた、、、
耳の臭いがいつもとは違う、、、


そんな症状がみられたら、『外耳炎』を起こしているかもしれません。

 



犬の耳 (耳道) は、解剖学的にもヒトと異なり、垂直部と水平部からなる“L字型”をしており、通気しにくい構造をしている為、外耳炎をおこしやすいといえます。


今回は、トップクラス級に多くの犬がかかりやすい病気の一つ、『外耳炎』についてお話します。

 



【症状】


外耳炎を発症すると、ベトベトとした臭いのある耳垢がみられ、同時に痒みや痛みを伴うこともあるため、しきりに耳を後ろ足で引っ掻いたり、首を振ったりします。

外耳炎は、悪化すると炎症が奥へと広がり、中耳炎や内耳炎へと波及する可能性もあります。

特に、アメリカン・コッカー・スパニエルでは重症になりやすいので、注意が必要です。


また、柴犬、シーズー、ウェスティなど、アレルギー性皮膚炎の頻発する犬種においても外耳炎を起こしやすいので注意が必要です。

 



【原因】


外耳炎を引き起こす原因は様々ですが、細菌や真菌 (マラセチア) が耳垢に繁殖することによって起こる場合が一般的です。


まれに外部寄生虫である耳ヒゼンダニの寄生によって起こることもあります。


また、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(脂漏症)などの全身性の皮膚病に併発して起こるといったケースもあります。


その他、腫瘍や異物などによって外耳道が狭まる(狭窄する)ことが原因となることもあります。

 



【治療】


点耳薬により治療を行うことが一般的であり、犬用の点耳薬のほとんどはステロイド剤や抗生物質などが混ざった薬剤になります。


これらによって痒みや腫れなどの炎症をしっかり抑えるとともに、耳道内で増殖した細菌や真菌を抑え込んで効果を発揮します。


今までは毎日ご自宅で点耳するタイプのお薬が主流でしたが、最近では動物病院で点耳して1週間、ないしは1ヶ月効果が持続するタイプのお薬もあります


お薬の種類や治療方法については、症状や犬の性格を考慮しながら、飼い主様と相談して決めていきます。

また、炎症や痒みなどが強く認められる場合にはステロイド剤を内服薬として使用する場合もあります。

耳ヒゼンダニのような外部寄生虫が原因の場合には駆虫薬を投与します。

外耳炎は慢性化、再発しやすい病気なので根気よく治療を続けることが大切です

 

 

 

【予防】


定期的な耳のお手入れを心がけ、日頃から耳の痒みや臭い、耳垢がたまっていないかをチェックしましょう。

外耳炎は、多湿になる梅雨の時期などで注意が必要です。

 



【耳そうじの仕方】


ご自宅での耳掃除の仕方は、犬の耳の穴の中ではなく、耳の内側の面(耳介内部)を、濡らした柔らかいコットンでふき取る程度が基本です


生体の持つ生理的自浄作用により、通常の耳であれば、耳垢は自然に外へと排出されるので、ご自宅ではそれをふき取るだけでかまいません。

外耳炎は、予防はもちろん、治療に関してもご自宅でのケアが重要なポイントとなります。


犬にとって耳は非常にデリケートな部位である為、日頃から愛犬が耳を触らせてくれるようにしっかりと信頼関係を築いておくことが大切ですね。

 

何かご心配やご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。