こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
早いもので5月になりました。
毎年この時期の神戸や明石は、気温が高くなり汗ばむ陽気となります。
気温や湿度が高くなるのと同時に、ワンちゃんの皮膚病のトラブルも頻発してきます。
今回は、これからの時期に多発し、夏の皮膚疾患の代表とも言える「膿皮症」についてお話させていただきます。
膿皮症とは、皮膚の細菌感染によっておこる皮膚病のことです。
図:膿皮症の時の毛穴の様子
膿皮症は全身の皮膚で起こりますが、特に脇、内股、腹部、背部、指間などでの発症が多くみられます。
また、湿疹、赤み、かゆみ、脱毛、フケなどの皮膚病変がみられます。
写真:カサブタを伴う紅斑
写真:ドーナツ状や円形が特徴的な小還
このときに、犬自身が患部をなめたり引っかいたりすることで症状や病態がより悪化してしまうことがしばしば認められます。
また、アトピーやアレルギーなどの基礎疾患がある場合では、膿皮症を繰り返す傾向にあり、慢性化すると色素沈着により患部が黒くなることがあります。
写真:慢性皮膚炎による皮膚の苔癬化
膿皮症の原因は、主にStaphylococcus 属(黄色ブドウ球菌)です。
診察では、『ヒトや他の動物にもうつりますか?』とよく聞かれますが、これらの原因菌は常在菌といって健康な犬の皮膚表面に元々存在します。
健康な皮膚では本来バリア機能がしっかりと働き、細菌の侵入を防御しているため、細菌が異常に増えて皮膚病を起こすようなことはありません。
ですので、膿皮症は他の犬にうつることはありません。
犬はヒトと比べると、皮膚の薄さやpHの違いなどから健康な皮膚でも膿皮症を発症しやすいことがわかっています。
また、膿皮症の発症にはアレルギーなどの基礎疾患が発症の引き金となっている場合もあります。
膿皮症に対しては抗生物質(外用薬・内用薬)の投与が主な治療となります。
抗生物質は細菌がしっかり排除されるまで、最低3週間は服用します。
また、症状の程度によっては、投薬と併用してシャンプー療法が行われたり、再発予防として薬用シャンプーで維持をする場合もあります。
シャンプー療法とは、治療として殺菌作用をもつ薬用シャンプーを週に2回程度使用し、通常のシャンプーとは少し違う洗い方をします。
また、症状の程度に加えて、ワンちゃんの性格や犬種も治療方法を選択する際に考慮します。
例えば、せっかく外用薬(軟膏やクリーム)を患部に塗っても、自分で舐め取ってしまっては効果が期待できない為、内服薬を選択します。
また、大型犬や長毛種となると、ご自宅でのシャンプーの負担も大きくなってしまいます。
膿皮症の予防としては、細菌の増殖を抑えるために生活環境を清潔にすることを意識しましょう。
また、日頃からの適切なシャンプーやブラッシングなどのケアを心がけ、皮膚のチェックもこまめに行なうことも大切です。
ご家庭のワンちゃんの皮膚に赤みや痒みなどの異常がみられた場合は、早めにご相談くださいね。