こんにちは、舞子ペットクリニックの藤原(嫁)です。
当院に来院される動物さん達は、ワンちゃんネコちゃんが大多数を占めますが、次いで多いのが実はウサギさんなのです。
彼らの魅力は、愛くるしいお顔、ふわふわとした手触り、警戒心が強いと言われる反面、意外にも懐きやすいところかと思います。
そんなウサギのもつ魅力かつ特徴の一つに歯が挙げられます。
犬や猫とは異なり、ウサギの歯は常生歯といって生涯どんどん伸び続けます。
そのスピードは1ヶ月で1センチにもなり、牧草(チモシー)などの繊維が多い草をよく噛んで食べて伸びた分の歯をすり減らすことで適切な長さを保っています。
しかし、何らかの原因によって上手くすり減らせなくなると、伸びすぎて噛み合わせに異常が起こってきます。
この状態を不正咬合といいます。
遺伝的素因や飼育環境も原因のひとつとされていますが、大きな原因として食餌の関与が挙げられます。
これは本来、牧草などの奥歯で何度もすりつぶさなくては食べられない食事を取っているウサギが、既にすりつぶして固めてあるペレットを主食にしてしまい奥歯ですりつぶすのではなく噛み砕く食べ方に変わってきたためである(歯の咬耗不足)といわれています。
不正咬合は、放置すればするほど様々な合併症(膿瘍、胃腸障害、鼻涙管障害など)を引き起こします。
不正咬合のウサギの治療では、伸びてしまった歯を定期的に削ってあげることが必要になります。
当院では、ウサギの全身状態や年齢を考慮しながら、基本的に全身麻酔下にて処置を行っています。
これは、ウサギに精神的ストレスを与えないこと、繊細で華奢な彼らの身体を考慮して安全に処置を行えることが主な理由です。
また、ウサギの口は非常に小さく、臼歯(奥歯)の状態をきちんと確認してから的確に削るためには、大きく口を開く必要があるからです。
口の中の痛みや伸びた歯の煩わしさから解放されたウサギの多くは、以前にも増して食欲旺盛となります。
ただし、治療により症状が改善しても、いったんズレてしまった噛み合わせの異常は残念ながら元には戻りません。
個々の状態によって様々ですが、1ヶ月から数ヶ月で同様の症状をくり返すことになりますので、定期的な治療が一生涯必要となります。
歯はウサギにとって大切な消化器官です。
日頃から牧草をよく食べさせることを意識して、歯の健康を守ってあげましょうね。
末筆ながら、今年も残すところ僅かとなりました。
私事ですが、10歳を超える高齢ウサギの闘病と介護を支え、今夏穏やかに自宅で見送ることが出来た一年でもありました。
2022年、皆さま良いお年をお迎えくださいませ。