こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。

 

梅雨時はジメジメしてお散歩にも行けず、、、気持ちも自然と盛り下がってしまいますよね。

人間界の6月虫歯予防月間に因んで、今回のテーマは歯周病です。

近年、ヒトと同様に動物においても口腔衛生の重要性が認識されるようになりました。

 

  

 

日頃の診察で、「目の下が腫れている」、「くしゃみと鼻水がよく出る」などという歯そのものの異常ではなく、別の症状で来院されて、結果としてそれらが歯周病から起因しているというケースに遭遇します。

 

歯周病は動物病院で割とよくみられる疾患で、3歳以上の成犬・成猫の約90パーセントが歯周病をもっているとも言われています。

 

では、なぜこんなに動物では歯周病が多いのでしょうか???

 

 

動物では、ヒトに比べて歯垢が歯石に変化するのが約3日と非常に早いことが原因として挙げられます。

 

歯垢とは、歯の表面や歯と歯肉の間の食べかすや被毛などが溜まったものです。

歯垢が長期間付着していると、唾液に含まれるカルシウム塩が沈着して石灰化し、歯石へと変化します。

そして、歯石の存在は細菌の温床となり、細菌はさらに増殖してしまいます。

残念なことに負のスパイラルはまだ続き、歯石に存在する細菌が産生する毒素によって歯茎に炎症を起こす歯肉炎、さらに歯の周囲組織に炎症が波及する歯周炎引き起こされてしまいます。

 

 

さらに慢性化してくると、冒頭でも触れたように、歯の根元の炎症(膿が溜まることによる眼の下の腫れ)周囲の歯槽骨が破壊されて鼻と口を隔てている骨を溶かしてしまう(細菌性鼻炎によるくしゃみや鼻水)を起こしてしまう場合もあります。

そして、歯の根元まで炎症が起こるようなダメージの大きな歯に関しては、抜歯が必要となります。

また、ヒトと同様に歯石における細菌感染によって、口腔内だけでなく血流を介して全身の臓器(腎臓、肝臓、心臓など)に影響を及ぼし、命に関わる危険性も近年では指摘されるようになりました。

 

 

写真のように、加齢に伴って歯石の付着が重度になってくると、普段のご家庭でのケアでは除去することが困難になり、全身麻酔下での処置が必要となってきます。

 

 

欧米では、健康な犬や猫でも1年に1回麻酔をかけて歯科検診・歯科処置を受けることが推進されています。

これは年に1回の麻酔の危険性よりも、無処置の歯周病の方が体にとって有害であると判断されているからです。

 

健康な歯を維持して健康な生活をおくる為にも、当院では定期的なデンタルクリーニングを推奨しています。

何か気になることやご不明な点がありましたら、お気軽にご相談くださいね。

 

 

次回の診療コラム4では、当院で実施した歯科処置症例やデンタルクリーニングについてお話したいと思います。