こんにちは、獣医師の藤原です。
以前にもお話ししたとおり、季節発情動物である猫たちの発情ピークは春頃であり、妊娠してから出産するまでに要する期間はおおよそ2ヶ月程度です。
つまり、立春から春先あたりに妊娠し、春から梅雨入り前に生まれる仔猫が多くなります。
そして、ちょうど今の時期にかけて動物病院への仔猫さんの来院件数も増えてきます。
当院でも、野外で仔猫を保護したり、里親として譲り受けた際に、猫エイズや猫白血病のウイルス検査についてのご相談をよく受けます。
これらの病気は、猫のウイルス感染症の中でも特に危険性の高い病気ですので注意が必要です。
今回のコラムは、そんな猫白血病ウイルス感染症(FeLV)についてお話しをしていきます。
猫白血病ウイルス感染症 (FeLV)
(感染経路)
感染猫の唾液を介して、喧嘩や舐め合ったり同じ食器やトイレを使用することで感染が起こります。
また、母猫から胎盤や母乳を介して子猫に伝染することもあります。
(症状)
初期には元気がなく、食欲不振や発熱などが見られます。
抵抗力の衰えから、傷が治りにくい、口内炎ができて治らない、リンパ腺が腫れてくるといった症状が現れます。
そのうち痩せてきて、鼻、唇、舌が白っぽいといった貧血症状がみられます。
末期には全身のリンパ節に腫瘍が認められて死に至ります。
一般的には、若齢猫、特に4カ月未満の子猫は、持続感染になる確率が高くなります。
離乳期を過ぎて感染した場合で約50%、生後まもなく感染した場合(感染した母猫に舐められて)ではほぼ100%が持続感染になると言われています。
このような猫では3~4年以内に80%以上が死に至るともいわれます。
一方、健康な成猫では一過性感染・ウイルス排除の経過をたどる=治る確率が高くなります。
※ 1歳以上の猫では10%程度しか持続感染にならないといわれています。
しかし、成猫でも様々な要因によって免疫能が低下している場合には、持続感染となってしまうこともあります。
つまり、ウイルス感染したときの猫の年齢と深い関係があるのです。
(検査)
ウイルス検査では、① 猫免疫不全ウイルス(FIV)② 猫白血病ウイルス(Felv)を簡易キットで調べることができます。
1ml程度のわずかな採血で検査が可能ですので、小さな仔猫でも安心して検査を受けられます。
(予防)
猫白血病ウイルス感染症の最も確実な予防方法は、感染猫と接触させないことです。
あるデータでは、野良猫や地域猫の約10%が陽性でウイルスを保有しているとも言われています。
そのためにも室内飼いに徹するようにしましょう。
先住猫がいて、更に新しい猫を家族に迎える場合は、一定期間隔離して、その間に検査をすることをおすすめします。
先ずはケージ越しでの付き合いが、お互いの猫にとっても少しずつ距離を縮めることが出来て、後の多頭飼育生活が円満につながるのではないかと思います。
次回は、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)についてお話しさせていただく予定です。