こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
早速ですが、前回のコラムのおさらいを、、、
涙は、涙腺で作られ、目の表面に分布し、上下眼瞼の内側にある涙点から鼻涙管を経由して鼻腔内に排出されます。
この過程のいずれかで異常が起こることによって目の外に涙が溢れ出てしまい、周囲の被毛が赤褐色に変化してしまう『涙やけ』(正式には流涙症)が起こってしまいます。
流涙症の原因は、大きく4つの原因に分類されます。
①涙の産生過剰
②涙の排出経路の異常
③目の表面に涙を保持できない
④食事
①では、逆さまつ毛、目の周りの被毛による眼表面への刺激が原因となっていることがよくあります。
このような場合、眼の表面への持続的な刺激が加わり続けることによって、涙が産生され続けてしまうのです。
対策として、眼周囲の被毛をカットしたり、動物病院で原因となるまつ毛を定期的に抜いてあげます。
②では、上述した涙の排出経路のいずれかの異常です。
例えるならば、水道の蛇口から水が出ているものの排水溝が詰まりかけている為、産生量>排泄量となってしまうイメージです。
涙点閉鎖症、涙嚢炎、鼻涙管閉塞などが挙げられます。
これらの原因が考えられる場合、写真のように全身麻酔下にて涙点形成や、涙嚢洗浄、鼻涙管洗浄を行う必要があります。
当院では、全身麻酔をかける避妊去勢の手術時に涙点や鼻涙管チェックを同時に行うことがあります。
トイプードルやマルチーズは、先天的に鼻涙管の狭窄や閉塞が多いと言われています。
ただし、子犬ではこれらの排泄経路がまだまだ未発達で、産生される涙の量に対して処理能力が追いついていない場合もあります。
つまり、成長とともに改善する可能性があります。
③では、マイボーム腺機能不全による涙の成分が問題となります。
涙は単なる水のように思えますが、『油層』、『液層』の2層構造になっています。
『油層』は主にマイボーム腺が関与しており、分泌される油脂で『液層』をコーディングすることで眼の表面は涙で保持されています。
マイボーム腺は、まつ毛の生え際に約20~40個程分布しています。
しかし、マイボーム腺の機能不全によって涙を保持する能力が低下してしまうと、分泌されるはずの油脂が固まってつまりを起こし、涙が目の表面に留まることができずに常に流れ落ちてしまいます。
マイボーム腺の機能を改善するためにご家庭で出来る対策として、温熱ケアがあります。
1日2回5分を目安に上下まぶた(眼瞼)付近を蒸しタオルで温めてあげることで、血流を高めて油脂の分泌を促進する効果があると言われています。
④ では、アレルギーの関与や食事中に含まれる脂質成分の問題などの説が提唱されており、主食のフードの変更で症状が改善したという報告も実際にはあります。
ただし、効果が出るまでには時間を要しますので、最低1ヶ月は変更したフードを継続することをおすすめします。
このように涙やけの原因を4つの要因に分けてご説明してきましたが、実際には様々な因子が複合して起こっている場合がほとんどであり、その原因に対するそれぞれの対策は多岐に渡ります。