こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
先日、ここ最近で主流となってきたwebセミナーを受講しました。
仕事や育児や家事の隙間時間を利用して、好きな時間帯に自分のペースで視聴することの出来る録画配信の素晴らしさをコロナ禍のこの1年で存分に体感しております。
ビバッ、webセミナー!!
その『減量道場』というユニークなネーミングのセミナーに因んで、今回は猫ちゃんの肥満についてお話ししようと思います。
猫の室内飼いがスタンダードになった現在、安全で快適な環境下で生活できるが故に肥満の猫ちゃんが増えています。
ぽっちゃりとした猫は見た目もまるまるとして可愛らしいので、飼い主さんも危機感を持ちにくいのかもしれませんね。
しかし、猫の肥満はヒトと同じくたくさんの病気のリスクを持ち合わせています。
個体差もありますが、猫の成長は6ヶ月齢から12ヶ月齢でストップします。
つまり1歳頃のときの体重が適正体重(標準体型の場合)となり、なるべくその体重を維持することが健康につながります。
品種や体格によって個体差があるので一概には言えませんが、成猫の理想体重は3〜5kg(体格の大きな品種では8kgが理想)とされています。
そして、そこから15〜20%増えるとほぼ肥満であると考えられます。
では、これから、肥満がどんなリスクをはらんでいるのかを順番に説明していきますね。
まずは糖尿病です。
肥満になると糖尿病のリスクがはるかに高くなり、肥満の猫の80~90%が糖尿病を患い毎日のインスリン注射を必要としています。
多くの場合、余分な体重を落とすことによってブドウ糖を調節できなくなる直接の理由となっていた蓄積脂肪がなくなるため、糖尿病を発病する前の状態に戻すことができます。
また、猫が肥満になると免疫能力が低下し、感染症を起こしやすくなります。
これには尿路感染症や結石も含まれますが、その原因は、太り気味の猫は健康な猫に比べて活動量が少なく、飲水量と排尿量も少ないことによります。
また、余分な体重が増えると、毛づくろいをするのが難しくなり皮膚病を引き起こすことがあります。
同様に、体重が増えることで関節に圧力がかかり関節炎を患う可能性があるほか、心血管系および呼吸器系も悪影響を受け、息切れや心臓の問題を引き起こすおそれもあります。
そして、肥満の猫が抱える、深刻かつ命にかかわるおそれのあるリスクは肝不全です。
例えばちょっと体調を崩して食欲低下が続いた場合など、猫の体が『栄養が足りていない』と判断してしまい、蓄積された脂肪を肝臓に送ってエネルギーに変換しようとします。
しかしながら、猫の身体はこのプロセスを効率的に行うことができないため、肝機能が低下してついには肝機能障害や肝不全を引き起こしてしまうのです。
更には精神衛生面においても、太り気味もしくは肥満の猫は問題を抱える危険性をはらんでいます。
猫は危険を察知した時に逃げたり隠れたりしますが、太り気味の猫は素早く反応することができないため、本能に従うことができず、それにより苦痛を感じる可能性があるからです。
一見、ぽっちゃりした見た目の可愛らしい猫ちゃんも、実は人知れず大きなストレスを抱えているのかもしれませんね、、、
〜簡単にできる愛猫の体形チェック法〜
①猫の胸に手を当てて肋骨を触る
②①の感触と自分自身の手を比較する
手の甲の感触と同じ
ベストな普通体形。
少しばかりの骨の存在を感じるかと思います。
そのくらいの触り心地が理想的です。
手をグーにしてこぶしの出っ張り部分の感触と同じ
骨のゴツゴツ感を感じるかと思います。
やせ気味です。
手のひらの感触と同じかそれ以上に柔らかい
骨を全く感じられないかと思います。
太り気味、肥満です。
体重計やデータ表も必要なく、飼い主さんの手さえあればいつでもどこででも簡単にチェックが出来ます。
ぜひ、毎日の習慣にして、適正体重をキープできるように愛猫の体重管理を行っていってくださいね。