はじめまして、獣医師の藤原(嫁)です。

不定期にはなりますが、飼い主様のちょっとした疑問をテーマにコラムを始めてみたいと思います。

細々ながら今後も継続していけるよう、敢えて「診療コラム」と題させていただきますね。

記念すべき第1回目は、飼い主様の認識率トップ3には入るであろう、ノミ・マダニ予防についてです。

 

最近では、真冬でも診察中にノミやマダニの寄生をよく目にするようになりました。

地球温暖化が一因とも言われていますが、ここ十数年でイヌやネコの飼育環境が屋内中心に変化してきており、飼育下での季節によ

る気温の変化が昔と比べて小さくなっていることも大きく関係しています。

さらに厄介なことに、ノミやマダニは13℃以上の気温や室温があれば繁殖活動が可能なため、いったん室内に持ち込んでしまうと繁

殖と寄生を繰り返すことが出来てしまいます。

 

 

このような理由から当院では通年のノミ・マダニ予防を推奨しています

 

ノミやマダニは単に動物を吸血するだけでなく、伝染病や寄生虫を運んできたりもします。

 

「犬バベシア症」をご存じでしょうか?

寄生したマダニがイヌを吸血する際に、唾液腺からイヌの体内へとバベシア原虫という寄生虫を送り込んでしまうのです。

そして、バベシア原虫に寄生された赤血球は壊されてしまいます。

 

 

写真は、感染イヌの血液塗抹標本で、赤血球に寄生しているバベシア原虫がはっきりと確認できます。

急性の場合は、黄疸や衰弱によって死に至る場合もあります。

そんな命に関わる恐ろしい病気が神戸市内でも毎年のように発生しているのです。

 

ペットにもヒトにも共通してうつってしまう病気や感染症のことを人獣共通感染症(ズーノーシス)といいます。

最も代表的なものとして、いよいよ予防注射シーズン到来の狂犬病がありますね。

このズーノーシスの一種であり、メディアで話題となっているSFTS(重症血小板減少症候群)は、西日本を中心に発生しており、

兵庫県下での報告例もあります。ヒトほど大きく取り上げられてはいませんが、ネコを中心にイヌやチーターなどでも感染が確認さ

れており、一昨年にはついにSFTS感染ネコからヒトに感染するケースも多数報告されています。

この死亡率の高いウイルスを媒介するのもマダニの一種であるフタトゲチマダニなのです。

 

 

 

また、「条虫症」をご存じでしょうか?

病院では、「ワンちゃん、ネコちゃんのうんちから白い虫が出てきたー!!」とショッキングな光景を目の当たりにしてしまった飼

い主様によくお会いします。

あれが瓜実条虫、いわゆるサナダ虫という、ノミの寄生が原因となって媒介される寄生虫です。

 

D. caninum ex dog. Given by Peter Schantz

 

残念なことに、瓜実条虫もズーノーシスであり、ヒトが経口的に摂取してしまうと感染してしまいます。

そして、その感染リスクは指舐めや爪嚙みをする小さなお子さんが圧倒的に高いと言われています。

 

 

なんだか飼い主様を不安にさせるような怖い話ばかりになってしまい、すみません。

しかし、予防さえきちんと行っていれば、ノミもマダニも寄生することはありません。

一概にノミ・マダニ予防といっても、スポットタイプや経口タイプ、フィラリア予防も一緒にできるものや、おなかの中の寄生虫も

一緒に駆除できるタイプのお薬がありますので、ワンちゃんネコちゃんの生活スタイルに合ったものを選んでいただくのがベストで

す。

 

疑問点、不安などがありましたら、お気軽にご相談くださいね。

 

 

大切なワンちゃんネコちゃんのためにも、飼い主様ご自身やそのご家族を守るためにも、ぜひ予防意識を高めていきましょう。