こんにちは、獣医師の藤原です。
今年度のフィラリア検査はもうお済みでしょうか。
また、フィラリアのお薬もスタートされているでしょうか。
当院ではフィラリア症の予防を5月〜12月までの8ヶ月間としています。
しかし、診察室で前シーズンの予防の確認を問診すると、
『寒くなってきたから去年は11月で(予防薬の投与を)終わりました』
『10月から蚊を見かけなくなったので大丈夫かなと思って、、、』
このように、自己判断から本来の投薬期間(5月〜12月)の途中でお薬を止めてしまったという飼い主様の声をよく耳にします。
そもそも、この5月〜12月の投薬期間はどのように決まっているのでしょうか。
その根拠となるのは、毎年発表されているフィラリア症の感染開始日と感染終了日から割り出された期間となります。
更に詳しく述べると、感染開始日と感染終了日はHDUから算出されます。
HDU:Heartworm Development heat Unit の略で、フィラリア症の原因となる犬糸条虫を媒介する蚊の体内でミクロフィラリアが感染幼虫に発育するのに必要な積算温度の単位
では、実際に兵庫県におけるフィラリア症感染期表をみていきましょう。
この表の早い感染時期に合わせると、5月中旬頃にスタートして、遅い感染時期は12月中旬頃が最後にフィラリア薬を飲ませる期間となります。
上述したように、涼しくなってきたから、蚊が見られなくなったからといって、独断でフィラリア症の投薬を終わらせてしまうと、その年に続けてきたフィラリア予防がすべて無駄になってしまいます。
また、誤解を生みやすいのですが、一般的によく用いられている『フィラリア予防薬』という言葉は『フィラリア虫体の成虫寄生を予防する』という意味であって、蚊によって感染する『フィラリアの幼虫に対する駆除薬』という意味合いの薬剤になります。
つまり、ノミダニ予防薬のように一定期間持続して効果を発揮するようなものとは異なり、フィラリア薬は投与後に短時間の駆除作用をもつタイプのお薬なのです。
上図に示す①〜③の期間が、フィラリア薬が駆虫効果を発揮するターゲット期間となります。
これは、フィラリアがイヌの体内に入ってから心臓や肺の血管に移動する準備が整うまでの期間であり、2カ月程です。
確実に予防するという意味で、どんなタイミングで感染しても、体内移動を開始する前に体内のフィラリア幼虫を確実に全滅させる為に、投薬間隔は1ヶ月毎と定められています。
フィラリア予防のポイントは、2つ、
① 薬を始める時期と終わらせる時期を守ること
② 1ヶ月ごとに確実に薬を飲ませること
以上の2点をしっかり意識して、今年もきっちりと予防しましょう。
※参考 住友ファーマアニマルヘルス株式会社