こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
愛犬と見つめ合うことで、飼い主さんも愛犬も一緒に幸せになれる、、、こんな研究報告があります。
飼い主さんと愛犬が目線を合わせると、脳内ホルモンであるオキシトシンという『幸せホルモン』の濃度がお互いに上昇するとのことです。
私たちは、同じ軒下で一緒に過ごすワンちゃんのお顔を一日に幾度となく目にしています。
そんな一番に目線のいくワンちゃんのお顔ですが、目の周りが涙で汚れている、いわゆる涙やけ(専門用語で言えば流涙症)で困っていらっしゃる方も多いかと思います。
今回のコラムでは、そんな涙やけの基本的なプロセス(序章)についてお話ししたいと思います。
動物の涙の量は、人間の約3倍と言われており、涙は涙腺で作られ、上下眼瞼の内側にある涙点から鼻涙管を通って鼻腔へ排泄されるため、通常は目の周りにあふれ出ることはありません。
ところが、いくつかの原因によって涙があふれ出て周囲の被毛に付着し、涙の成分や増殖した細菌やカビによって赤褐色に酸化・変色してしまうことを「涙やけ」と呼んでいます。
赤褐色の眼ヤニが目頭に出来てしまい、被毛に絡み付いて取りづらいし、犬自身が嫌がって拭き取らせてくれない、、、
診察室では毎日のように飼い主さんのこのような嘆きの声を耳にします。
そもそも無色透明な涙、なぜこのような変化が起こるのでしょうか、、、
それは、涙に含まれるポルフィリンという物質が原因となるからです。
ポルフィリンは、古くなって壊れた赤血球に含まれる鉄分を分解するときに生成され、消化管、尿、唾液、涙を介して体外へと排泄されます。
犬の涙は本来は無色透明ですが、涙を放置してポルフィリンが被毛に長い時間付着すると、紫外線と反応して酸化し、被毛を赤褐色に変色させてしまうのです。
すべての犬の涙にはポルフィリンが含まれていますが、特に白色や淡色の犬では非常に涙やけが目立ってしまいます。
具体的に例えるなら、トイプードルやマルチーズ、チワワ、ペキニーズ、シーズーなどの小型犬で多く見られます。
また、ポルフィリンは唾液中にも含まれるため、白い被毛の犬が足を舐めたり噛んだりしていると、涙やけと同様に赤茶色の被毛へと変色してしまいます。
つまり、涙やけを最小限にするためには、ポルフィリンの付着をなるべく少なくすることが重要となるのです。
よって、一番の対策は眼周囲をこまめに拭き、清潔にしておくことです。
例えば、コットンを水にひたして、目元を拭いて、ふやけた汚れを拭き取るといった方法です。
また、眼瞼周囲の被毛を短くカットしておくことも涙やけ対策の一手となります。
、、、と、ここまでの基本的な話を聞けば、なんて単純、我が子の涙やけは明日にでも改善しそう!!と思われるのではないでしょうか。
しかし、実はこの涙やけ、考えられる原因が沢山あり、さまざまな因子が複合して起こっている場合がほとんどであり、その原因に対するそれぞれの対策は多岐に渡るのです。
そんなこんなで、今回のコラムは序章に過ぎず、涙やけについては次回のコラムにてより詳しくお伝えしていきたいと思います。