こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
突然ですが、動物病院で尿検査を受けられたことはありますか??
尿検査は重要な検査の一つであり、実は犬も猫もおしっこを検査することでたくさんの病気を検出することができます。
例えば、、、
* 結晶が出ていないか (尿石症)
* 細菌や炎症細胞が出ていないか (膀胱炎)
* 濃いおしっこが作れているか (腎臓病)
* 尿糖が出ていないか (糖尿病)
怖がりだったり気難しい性格の猫ちゃんの場合は、病院への来院自体が少しハードルが高いと感じる飼い主様も多いかと思います。 その場合でも、まずはおしっこだけを持参していただき、尿検査をすることで簡単な健康診断が出来るのでおすすめです。
今回は当院で行っている尿検査について、具体的な説明を入れながらお話ししたいと思います。
○ 一般性状検査
・ 尿の色調:尿は通常、黄色味がかった色をしています。水のような無色の尿や褐色・赤色の尿、乳白色の尿などは、病気による色調の変化の可能性があります。
・ 混濁度:排尿直後の尿は透明です。白くにごっている尿には、結晶や脂肪、細菌、細胞成分などが多く含まれていることがあります。
・ 尿比重:比重とは、おしっこの濃さを示すものであり、尿量が多いときは薄い尿がでています。逆に尿量が少ないときは濃縮された尿です。つまり尿比重は尿量の変化を示します。水の比重が1として、犬・猫の尿比重は1.020~1.040が正常値です。
○ 科学的性状検査
・ pH:雑食から肉食主体の犬・猫の尿は、食べ物により酸性から弱アルカリ性を示します。尿中で細菌が増殖すると、アンモニアが発生して尿がアルカリ性に傾くことがあります。
・ タンパク:おしっこは、血液を腎臓のフィルター構造でろ過してつくられるものです。尿中にタンパクが多く出てくる原因は大きく分けて三つに分けられます。
1、腎臓のフィルターにかからないような異常なタンパクが血液中に増えるとき
2、腎機能が低下しているとき
3、尿路や生殖器に炎症や腫瘍が存在するとき
・ ブドウ糖:通常、尿中に糖は出ません。尿糖がでるときは、高血糖が存在する時、もしくは腎機能に異常があるときです。
・ ケトン体:ケトン尿は、ケトーシス、脂肪肝、糖尿病性ケトアシドーシスなどの病気でみられることがあります。
・ 潜血:潜血には血尿とヘモグロビン尿の二種類があります。血尿は泌尿器系のどこかで出血があることを示しています。ヘモグロビン尿は、血液中で赤血球が破壊されてしまう溶血性疾患や輸血の副反応で出ることがあります。
・ ビリルビン:血液中のビリルビン濃度が増加する疾患を黄疸といいます。そのとき同時に尿中にもビリルビンが排泄されます。
〇 尿沈渣
尿を遠心分離にかけた後に、上澄みの液体を捨てて得られる沈殿物が尿沈渣です。これを顕微鏡下で検査します。
・ 細胞成分:尿路あるいは生殖器のどこかに炎症が存在するときには、炎症細胞である白血球が出現します。また、赤血球が多く出るときは出血を意味します。他に、尿路系の上皮細胞がみられることがありますが、その上皮細胞に悪性所見が認められる場合、腫瘍が存在する可能性があります。
・ 結晶:結晶は、結石の原因になったり炎症を起こすこともあるために注意が必要です。原因としては食事や体内での代謝、感染症などが挙げられますが、結晶の種類によっては肝臓疾患などの病気により出現するものもあります。
犬・猫でよくみられる結晶成分はリン酸アンモニウムマグネシウム結晶(ストラバイト結晶)、
シュウ酸カルシウム結晶です。
・ 微生物:尿中にみられる微生物には細菌、真菌があります。大量の細菌が存在する場合、通常は膿尿となり白血球も同時に増加して「白く濁ってとても臭いおしっこ」になることが多く、膀胱炎を疑います。場合によっては、細菌の種類を調べる同定検査や、有効な抗生物質を調べる抗生物質感受性試験が必要となることもあります。
~ご家庭でのおしっこの取り方~
写真は、「ウロキャッチャー」という採尿のための専用グッズです。
棒にスポンジがついていて尿を吸収することができるので、動物が排尿ポーズを取り始めたら、お尻の下へそっと入れてスポンジ部分を十分に濡らしてください。
猫の場合は、いつも使っている猫トイレの猫砂の上にペットシーツを裏返しにして置いておく
方法や、二層式トイレのペットシーツを予め抜いておく方法もあります。
5ml程度の尿が採取できれば検査は十分に行えます。
ただし、採取した尿を長く放置してしまうと、細菌が繁殖したりして検査結果に異常をきたしてしまうことがある為、なるべく新鮮な尿を提出していただければと思います。
どうしてもすぐに来院出来ない場合は冷蔵保存をおすすめします。
ご心配やご不明な点があれば、お気軽にご相談くださいね。