2020年6月、愛知県で入院していた患者が狂犬病で亡くなったというニュースが流れました。
フィリピンで犬に左足首を咬まれたことによってウイルス感染し、帰国後に発症したとみられます。
日本における狂犬病での死亡は14年ぶりのことでした、、、


こんにちは、獣医師の藤原(嫁)です。
ちょうど4月から予防接種がスタートするタイムリーな話題の狂犬病について今回はお話ししようと思います。

神戸市 https://www.city.kobe.lg.jp/a84140/kenko/health/hygiene/animal/yoboucyusya/index.html

明石市 https://www.city.akashi.lg.jp/kankyou/dobutsu/kainushi/kyokenbyo.html

 

 

 

狂犬病は、感染した犬に咬まれるとウイルスが神経系を介して脳の神経組織に達し、水や風を怖がる、唾液や汗などの分泌が増加する、マヒ、幻覚を起こしたり、犬の遠吠えのような唸り声を上げる場合もあります。

早い話が、狂犬病ウイルスは、人や犬など寄生した生き物の脳を支配してしまうのです

 

 

去ること十数年前、、、学生時代の講義で、発展途上国の狂犬病感染患者の衝撃的な資料映像が流れた後の静まり返った教室を今でも鮮明に覚えています。
このように臨床症状が非常にショッキングなことから、バイオハザードシリーズなどのフィクションのいわゆるゾンビ物における「感染した人間をゾンビに変えるウィルス」のモデルになったとさえ言われています。

 

 


発展途上地域では現在でも狂犬病の流行が続いており、世界では年間約5万9000人もの人が死亡しています。

そして、発症してしまうとその致死率はほぼ100%とされています

狂犬病の流行には「都市型」と「森林型」の2つのタイプがあり、アジア諸国に広くみられる「都市型流行」では、犬からヒトへの感染例が大多数を占めています

 


 
「狂犬病予防法 第四条」をご存じでしょうか?

日本では、狂犬病ワクチンの接種は犬を飼育する飼い主の義務として法律で定められています

島国である日本は、世界でも数少ない狂犬病清浄国(狂犬病ウイルスが撲滅されたとされる地域)ですが、近隣諸国の発生状況からみても、狂犬病に感染した動物がいつ本国に上陸してきてもおかしくない状況です。

犬を船の守り神とあがめる習慣のあるロシア(狂犬病多発国)から寄港した検疫を受けずに上陸する犬や、近年では輸入されたコンテナに迷い込んだ猫が多発しています。

このような事例が多発していることから、狂犬病が日本国内に流入する恐れがあるとして動物検疫所も注意喚起しています

ワクチン接種がスタートした新型コロナウイルスでも同様に考えられるのですが、ある地域に、ある病気(例えば狂犬病)に罹患した動物が入ってきても、その地域においてワクチンの接種率が75%以上であった場合、その病気の蔓延を防ぐことができる。」という統計学的根拠(シャルル・ニコルの法則)があります。

つまり、日本での狂犬病の蔓延を防ぐために、狂犬病ワクチン接種率の向上を目指して行政や獣医師は一生懸命に呼びかけているのです

しかし、現状は残念なことに、平成5年には全国の登録犬の99%以上が接種していた狂犬病予防ワクチンが、平成26年では71%にまで接種率が減少しています。

行政に飼い犬としての届け出のない未登録犬を加味すると、接種率は実質4割程度との見方もあります。



人間が社会の中で動物と上手に共生していくためには、正しい知識とモラルを持った行動が必要です。
犬を飼育するにあたり、原点に戻って、飼い犬の登録と年1回の狂犬病ワクチン接種は、飼い主としての最低限のマナーであることを再認識していただければと思います

なお、健康上の理由などにより接種できない場合は、当院にて猶予証明書の発行も可能ですのでお問い合わせください。